以前北本晶子さんが個展deliriumを開催したときと同じ石川町のgallery fuで、今度は川口絵里衣さんとの2人展、迷宮の悪魔を開催しました
迷宮の悪夢
実は北本さんと川口さんは1年前にも同じgallery fuで迷宮の悪魔という同じタイトルで2人展を開催しています。今回は2回めの二人展となります。来場者には素敵な栞(A4版)を頂くことが出来ますが、それにお二人のメッセージが書かれていました。
北本晶子
それは
過去の自分が報われる
ような願い
夢というのは脳が睡眠時に記憶や体験を整理するときに見るものらしい。
また、人間は生存本能から、経験として、ネガティブな物事を強く記憶するものだから、悪夢の記憶はより印象的に覚えていることが多いという。
私の作品は自分の「記憶」や「印象に残った体験」から、制作するが、
そこにはやはりポジティブなものより、ネガティブな要素のほうが多いと言える。
しかし、ただネガティブと思える表現をすることはせず、
作中に「抗い」を入れることを意識している。
それは過去の自分が報われるような願いにも思う。
悪夢が逆に吉夢と表されるように、私のネガティブな作品から
見る人に少しの希望を与えられたら嬉しく思います。
川口絵里衣
自分は
その渦の中で
もがき続ける
利便への不安は置いてけぼりになる感覚、
ついていかなければならない忙しい世の中への休めなさ。
すべて手のひらの上で完結しがちな毎日と、他人のストーリーを追う時間。
進化していく現代の生活の中、ふと自然に帰りたくなる感覚を覚えます。
何にしがみつくのか、何に従うのか、上部を調べて知った気になる形。
自分はその渦の中でもがき続ける気がしています。
変えるなら何を変えるのか、当たり場のない不安と向き合って、
答えが出るのがいつなのか知らないまま、
あちこちに手を出すんだろーなぁいあああああ
このようなメッセージの中、いくつかの新しい試みも展示されています。実はその写真を撮るのを忘れているので、このエントリーを上げるかどうか迷ったのですが・・・・
北本晶子さんの作品
最近の作品によく出てくる、POPな画風とちょっとおどろおどろしい要素も取り入れた、明暗の共存した作品です。真ん中の狐のハンドサインは実は仏教の印を示しているそうで、そう言われていみると炎の形が仏画のようですし、印を結ぶ手のひらの真ん中の縦に開いた目は、仏像の額に見る形です。最初は何か液体が垂れている様子を見て女性のシンボルを想像してしまった僕の心はかなり濁っているのでしょうか。
古ぼけたアパートが晶子さんのお住いのすぐ近くの建物だったりして、日常と非日常が混ざり合うのは晶子さんらしいところ。砂漠を絨毯に乗って旅する可愛いアラジンは晶子さん自身らしいです。なんで巨大なお尻があるのかは、ギャラリーの人も聞いたけどはぐらされたのだとか。
川口絵里衣さんの作品
川口絵里衣さんはペン画家としてスタートしていますので、こちらのペン画が本流でしょう。非常に緻密なペンのラインは、残念ながら原画でないと感じ取ることが出来ません。ペンのタッチで色彩や質感を表現しているのはさすがだと思いました。視線をこちらに向けずに目を伏せていたり、向こうを向いている構図が多いのも、新鮮な印象ですし、視線に目が行かない分、他の部分の緻密なタッチを感じ取れます。睫毛の描き込みが凄いです。
レジンによるマリア様の作品群は新機軸だそうです。マリア様と言ってもちょっと観音様にも見える造形になっていて、北本さんの仏画にも見える作品と対をなしています。
メインビジュアル
帰ってきてから写真を撮るのを忘れたことに気がついたメインビジュアルは川口絵里衣さんのドライポイントです。
こちらの画像は川口さんのTwitterからお借りしてきました。
👾展示のお知らせ👾
— 川口 絵里衣 (@elly_kawaguchi) July 20, 2021
今年も二回目となる『迷宮の悪夢』北本晶子さんと二人展開催致します。
新しくアクリルをミックスさせた作品や版画も展示します。
【迷宮の悪夢】
2021/7/23(金)〜8/8(日) 月曜休廊
12時~19時 ※日曜日は17時迄。
【アクセス】
〒231-0868
横浜市中区石川町1-31-9@gallery_fu pic.twitter.com/4yQAlwgXY1
北本さんがメゾティントで作品を作っているので、銅版画では先輩となります。今回の二人展に向けて、色々と北本さんが川口さんにアドバイスしながら作り上げたのだとか。川口さんの緻密なペンのラインがエッチングの針の動きにもでているような作品です。今回銅版の原盤と複数の作品も展示されていて、刷り方によって表情を変える様子も見ることが出来ました。これが「あちこちに手を出す」ことだとしたら、もっともっと手を広げて欲しいと思います。
それに呼応する北本さんの作品は左上に見えるイワシに乗って空を飛ぶ作品。川口さんが鳥なら、北本さんは魚という事だそうです。
その他にも北本さんは金魚を自分の分身として描いているとか、色んなお話を聞いてきました。
二人展は8月8日までの開催、川口絵里衣さんは7月31日まで、石川町駅を中心に点対称の場所にあるGallery ARKで開催されているアドニス展にも作品を出品しています。こちらではまた違う画風で出されていますので、お時間がある方は両方見る事がお薦めです。
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