今まで、会社帰りに画廊巡りが出来ていたのですが、在宅勤務メインになってなかなか都内に出ることが少なくなってしまいました。最近は土曜日にお目当ての作家さんが複数展示を行っている時にはしごで展示を回ることが多くなっています。
MON TRÉSOR×横田紗礼 - C’EST MOI これがわたし -
最初は、絵画の個展ではなく、ランジェリーフォトサービスをしている一山花さんと横田紗礼さんのコラボ展になります。
これがわたし
素人モデルさんのランジェリー写真と横田紗礼さんの絵がペアになった展示になっています。
それぞれの女性が、自分のコンプレックスを抱えていて、コンプレックスはそのままに、ありのままの自分を受け入れてさらけだそうとする意志の力を写真にしたという感じ。
それに対して、横田さんの絵の方は、心の中に抱えているコンプレックスや葛藤を表に出しているように見えています。ちょっと陰りのある目の表情や、ちょっとした仕草の中に、コンプレックスを理屈では受け入れているのだけど、納得しきれていない心象が描き出されています。
横田さんの絵は普段は小道具満載で、原画を見ても全部の仕掛けを見尽くすことは出来ないほど、1枚の絵の中に20-30の仕掛けを仕込んでいるのはザラなのですが、今回は背景に殆ど物がない、物凄くシンプルな構図になっています。ただ、顔の右半分と左半分で光の加減や目の表情を全く変えているものが多くて、2面性を描くことに成功しているように思います。
写真で切り取られている女性たちは、自分のコンプレックスを跳ね返して、ポジティブに生きている様子が見えますが、やはり一皮むけば中にドロドロのコンプレックスが渦巻いている状況も瞳の奥から覗いています。
そんな2面性を見せながら、「私は無敵だ」などの強い言葉をキャッチにした煽り文句で展示しています。「ありのままの自分を愛そう」なんていうごまかしの言葉を飛び越える意思の強さを感じる展示です。
📣いよいよ明日から!📣
— MON TRÉSOR (@MONTRESOR_JP) June 10, 2021
【コラボ展示企画】
— C’EST MOI これがわたし —
MON TRÉSOR×横田紗礼
2021 6/11(fri) - 6/16(wed)
12:00〜20:00
新宿眼科画廊 @gankagarou
お待ちしております!✨ pic.twitter.com/9lzfjoqsDA
既に展示後半ですが、16日まで新宿眼科画廊で開催中です。
北本晶子 delirium
新宿から横浜石川町まで副都心線ー東急東横線ー根岸線と乗り継ぎ移動しました。石川町のgallery fuで北本晶子さんの個展が開催されていました。
北本晶子さん
北本晶子さんの経歴はこんな感じになっています。僕が北本さんを最初にブログで書いているのは2018年のTOKYO美人画展でした。 その時から、絵の振り幅の広さや、描かれているちょっと耽美なダークサイドな面に魅力を感じていました。
delirium
deliriumとは「せん妄」と訳され、意識混濁に加えて、奇妙で脅迫的な思考や幻覚や錯覚が見られるような状態、なのだそうです。異次元の世界を1枚の絵の中で繋ぎ合わせたような北本さんの絵は、確かにdeliriumというテーマがふさわしく思えます。しかし、最近のPop調の絵で、ホットケーキの上に「ほっとけ」と呟いて横たわる女性とか、むしゃくしゃという文字をむしゃむしゃ食べる「むしゃくしゃをむしゃむしゃ」のようにdeliriumではあるけれど、楽しい感じがする作品も多いです。この三角コーンでユニコーンもドロドロしたせん妄というより、現実離れした夢の世界にも見えてきます。それにしても宅配の配達員がラバーコーンを北本さんのお家に配達している様子を想像しただけでほほえみが漏れてしまいます。
こちらは前回の個展Picnicに展示されていた作品。メルヘンの世界が描かれています。最近はこんな感じのPOPな色彩が多用されています。足が先の方に行くほど太くなるタッチは手塚漫画の影響なのだそうです。
今回の新作のやっチャイナとハートがズッキュンです。やっチャイナのチャイナ服の女の子とお皿の模様は、実際にこのチェーン店に行ったことがある人なら分かるはず。ここでチャーハンと餃子を食べたら、男の人でも結構お腹いっぱいになります。女子が街中華で餃子付きのラーメンやチャーハンをむしゃむしゃ食べているのって、結構好きです。ハートがズッキュンの心臓はちゃんと解剖学的に正しい位置に冠状動脈が描かれています。北本さん、こういうところ結構細かいんです。
こちらは北本さんのもう一つの顔であるメゾティントの作品。商店街や酒場街の描写は少し物悲しく、メゾティントのモノトーンとよくマッチしています。
北本さんの個展はもう会期を過ぎてしまいましたが、もう次の展示も決まっているそうです。前から多彩な人だとは思っていましたが、メルヘンポップな画風を手に入れて、更に絵の振り幅が広がった感じ。
前半で紹介した横田さんもそうですが、一人で三人展ができそうなぐらい、引き出しの多い作家さんですので、これからの活躍がますます楽しみです。